昨年末(2020年12月29日)に世界的な服飾デザイナーのピエール・カルダン(文中敬称略)が98才で亡くなった。(以下の画像7枚はNHK-BS1テレビより引用)
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ピエール・カルダン(↑晩年)(↓38才頃)
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↓カルダン作品
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カルダンは高い創造力をベースにして、まず服飾デザインでは、斬新さに加えて従来に無い”素材”例えばビニールなどを採用したり、オートクチュール(高級注文服)に加えてプレタポルテ(高級既製服)にも進出したりした。

またヨーロッパの服飾デザイナーが東洋人のモデルを採用する初動の一端を担い、1959年にルイ・フェローが日本人のモデル松田和子を起用したのに次いで、カルダンも翌1960年に松本弘子を起用した。(イブ・サンローランも同年に松田和子を起用) カルダンはその後も初のアフリカ系モデルも採用。こうして氏は「ファッションの革命児」と称された。

さらに氏のセンスを服飾の世界以外の広い分野に活かしてデザインした。例えば食器、調理器具、家具、タオル、タオルケット、足拭きマット、壁紙、車椅子のシート、自動車の外装、などに及んだ。

それらは800件に及ぶライセンスで生産販売された。

さて、その”ピエールカルダン・デザイン”の製品の中で、私が忘れられない電気製品がある。それが・・

◎ポケッタブルラジオ(三菱電機製:7X-800)
1963(昭和38)年に発売されたトランジスタ7石のAM(中波)ラジオで、寸法は86X86X35ミリ、重さ約200グラム。単3電池2本使用。
本体色は、レッド、オレンジ、ブルー、ライトグリーン、ライトブラウン。

最大の特長は全体が丸みを帯び、角もアールがついて、手に持ってはよく馴染み、服のポケットに入れても布地を傷めない形状デザインであり、この時代の同様の大きさのラジオが全て”四角い角張った箱”という形状であった中で、ズバ抜けて斬新で素晴らしいモノであった。

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上記5枚の画像はヤフオク出品物写真より引用

↓形状がより理解できる動画

デザインの専門家によれば、このラジオの形状には”アールどうしのつなぎ方”に難ありの部分があることと、”ボリュームやチューニングのツマミ周り”の処理に改善の余地があるそうだが、とにかく大きな視点で見れば、やはり優れモノ。

このラジオの出現に関連して思い出されるのが、1957(昭和32)年から以後数年間にわたって当時の日本専売公社(現、JT)が展開したCMで「たばこは動くアクセサリー」というコピーを使い、当時の有名女優の司葉子、池内淳子、久我美子、香川京子、団令子、白川由美らをそれぞれ登場させた多数のポスターとテレビコマーシャル。
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画像は「十和堂」のHPより引用

カルダンデザインは、言わば"ラジオを「音の出るアクセサリー」にした"とも言えよう。

カルダンの他にも"服飾デザイナーで家電デザインに関わった"2例を以下に綴ります。

◎アンドレ・クレージュがデザインした家電品
カルダンと同じくフランスで活躍した服飾デザイナーのアンドレ・クレージュ(1923~2016)も服飾以外の分野にもデザインを提供した。クルマのホイールのパターンやバイクの外装などもあるが、日立家電販売(現 日立グローバルライフソリューションズ(株))が同社の複数の家電製品にクレージュデザインを採用したことがある。

↓日立ヘアドライヤー(HD-1234AC)
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↓日立ポータブルカセットプレーヤー(CP-S3C)
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↓アンドレ・クレージュのロゴ(最下部が最新変更版)
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◎森英恵デザイン採用の家電品
ファションデザイナーの森英恵も服飾以外にも食器、タオル製品、寝具などに関与していて、家電製品には・・
松下電器(現、パナソニック)が1977(昭和52)年に森英恵の代表的モチーフである”蝶”をあしらった洗濯機を製造販売したことがある。本体色は白、赤、青。

当時、日本の多くの家電メーカーは、カラフルな本体色や”蝶よ花よ?”と模様を入れた製品が流行していたもの。
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写真は「リサイクルショップ『やしの実』」のHPより引用

荒川金属工業(株)は、電気式スロークッカーの「マルビシ スローポットミニ ハナエモリ」(EP-550)を製造販売。これも本体表面に森英恵の”蝶”とロゴを配したデザイン。
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余録 : カルダン、クレージュが家電製品以外に関与した例

カルダン・・車椅子「iR-PC」のシート類(日進医療器(株))↓
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カルダンがいかに大量のライセンスを与えたかを表すように、我家にも存在するカルダンもの2点(すべて自家購入ではなく貰い物)

1)カルダンクッキングパン (カルダンらしい丸型取っ手)↓
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2)カルダン マット↓
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クレージュ・・「クレージュ タクト」 HONDAから1985年に発売されたバイク
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飛話・・カルダンデザインのポケッタブルラジオが発売された
1963(昭和38)年と言えば、発売元である三菱電機のデザイン部署には、あの女優「鶴田真由」の父上である「鶴田剛司(たけし)」氏(東京藝術大学卒)が勤務していて、その前年の(毎日新聞社主催)「1962年度毎日工業デザイン賞」には氏を中心とする6名から成るチームが応募した「三菱超小型テレビジョン受像機」のデザインが特選1席を獲得している。

その後1964(昭和39)年には米国イリノイ工科大学に留学し、帰国後に結婚して1970(昭和45)年に"真由"が誕生。氏はその後三菱電機のデザイン部門のトップの地位に昇りつめられた。

私は氏がトップにおられた時期の1992(平成4)年3月に東京の湯島で一度お会いして会話をしたことがありますが、氏は"全く偉ぶるようなことをされない方で実に紳士的に"対応してくださったことが強く印象に残っています。端正なお顔でダンディ、まさに「この親にして、この子"真由"あり!」・・確かに納得します。
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「鶴田真由」写真はhttps://anoima.infoより引用
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