5月に入って木々のやわらかい葉が出揃ってきたので、木の芽が出始める時期を指す「木の芽時」を過ぎてからひと月くらい経っているはいるが、私はこの「木の芽時」という言葉には、ある意味がつい連想されてしまう。

ところで・・

◎「木の芽時」の正しい読み方は?
「木の芽時」という言葉、恥ずかしながら後期高齢者の私は今までこれを「きのめどき」と読んでいたのだが、正しくは「このめどき」と知った。

試しに広辞苑をひいてみたら・・「きのめ」も「このめ」もどちらも個別の項目が在る。しかし双方共に「木の芽」の文字が当てられているものの、関連語としては「きのめ」の項には「きのめどき」は無く、「このめ」のほうに「このめどき」がある。

◎「木の芽時」に現れる異常?
もともと季節の変わり目には自律神経不調が元となって体調不良が出やすく、それが顕著なのは春先なのだが、この時期にはメンタル面でも異常が起きて・・

昔から、”「木の芽時」には、精神に異常をきたす人が出ることが多い”と言われており、事実この現象は医学界でも認知されているとのこと。

先ごろ、ある女優が自ら運転するクルマで事故を起こした際に奇異な行動をし、その後の病院では看護師に危害を加え、警察ではまともな応答ができないなどの症状が現れていたが・・

後日の診断結果では”躁うつ病”と”甲状腺分泌過多”が原因の行動だったとされたが、これも「木の芽時」現象の範疇に入るのだろうか?

◎藤村操(ふじむらみさお)も「五月病」だったのか?
さて五月に入って現れると言われる「五月病」。 医学上ではそのような病名はないのだそうだが、実際には日本の社会で4月に行われる入学、進級、入社、転勤などによって、新しい勉学や仕事の環境に馴染めない人やついていけない人、あるいは疑問を抱く人たちが、ストレスや苦悶をつのらせて一か月経った5月になると、精神不安定、うつ状態、無気力、疲労感、不眠などの症状が出ることが多い。

1903(明治36)年、旧制一高の学生の藤村操(16才)が栃木県は日光の華厳の滝(高さ97m)から投身自殺した。

↓藤村操と華厳の滝
fujimura-kegon

彼は自殺直前に「巖頭之感」と題して、自分が死を決する理由を述べた文を、傍らのミズナラの木の幹に刻んで残した。

「巖頭之感」の全文・・
悠々たる哉天壤、遼々たる哉古今、五尺の小軀を以て
此大をはからむとす。ホレーショの哲學竟に何等の
オーソリチィーを價するものぞ。萬有の
眞相は唯だ一言にして悉す、曰く、「不可解」。
我この恨を懷いて煩悶、終に死を決するに至る。
既に巖頭に立つに及んで、胸中何等の
不安あるなし。始めて知る、大なる悲觀は
大なる樂觀に一致するを。

華厳の滝に投身自殺した日は、まさに5月の22日。やはり彼も「五月病」だったのだろうか?

余談だが、彼の投身自殺によって華厳の滝は自殺名所になって、彼の死後4年間で自殺をはかった者185名、内40人が死亡。

のちの自殺名所となった伊豆大島の三原山火口では、『投身自殺第1号は1928(昭和3)年の男性26才。さらに1933(昭和8)年の1月から2月にかけて実践女学校(東京)の学生が二人自殺したことが発端となって・・

この年昭和8年の自殺者の男性130人、女性13人、未遂は687人。翌昭和9年は死者187人、未遂671人。昭和10年は死者164人、未遂は574人となり、翌昭和11年※から下降線をたどりはじめた』 (『』内は「毎日グラフ別冊 サン写真新聞昭和27年版」より)

※昭和11年は「2.26事件」があった年

◎やはり自殺者も多い3,4,5月
警察庁発表の年間月別自殺者数をみると、冬季は少ないものの、木の芽時から急増して五月病の時期にかけての3か月が年間でもピークとなっている。

令和6年自殺者数 合計18647人 

12月1371人 / 1月1688人 / 2月1559人
          
3月1894人 / 4月1903人 / 5月1853人
          
6月~11月は1700~1500人台

◎藤村操の妹と結婚した安倍能成(あべよししげ)
藤村操の妹の藤村恭子は、旧制一高の藤村操の同窓生でもあった安倍能成(1883=明治16年~1966=昭和61年)と結婚した。安倍氏は知る人ぞ知る哲学者、教育家、政治家で東京帝国大学卒業後、旧制一高校長、学習院院長、文部大臣などを務めた。

↓安倍能成
abeyosisige

この”安倍能成氏の妻は(有名な) 藤村操の妹であった”ということを私はつい最近までは知らなかったが、世間でもあまり知られていないのももっともで、私の知人で中学、高校、大学まで学習院で学んだという人物に聞いてみても、「確かに丁度安倍先生が院長の時期だったので訓示などを直接聞いたことはあるが、先生の奥様の件は知らなかった」と言っている。

余録
ご存知のように、料理の世界においては「木の芽(きのめ)」と言えば「山椒の葉」のこと。
我が家のプランターにも山椒が自然に生えて20年くらいになるが、丁度今頃は若葉がやわらかいのでチョイチョイ摘んでは利用している。
ただし、山椒は雌雄があり、ウチのは雄なので実はならないのが残念!

↓我が家の山椒 (枝の棘には要注意)
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