世の中には、ものごとの分析や発想などのための要素を”見える化”する手法が多数開発され利用されています。いずれも人間の頭脳を駆使する必要がありますが、これからはITを使えばもっと効率があがるのか、あるいはこれらの手法に代わるカタチが出現するかも知れませんが・・
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現在のところ存在する手法の中には「マンダラ」や「スゴロク」に似たカタチを使った手法が幾つか出ていて前回ご紹介したのは「マンダラチャート」ですが、今回は同じ”マンダラ”がアタマにつくものの違う呼称で当然手法内容も異なる「マンダラスゴロク」。そして同じ”スゴロク”がオシリにつくものの違う呼称の「デザインスゴロク」についてです。・・本題の前にまず”スゴロク”とは・・

◎スゴロク(双六)は・・
インド発祥で中国、朝鮮半島経由で日本に伝来されたとされ、サイコロをふって、出た目によって升目に置いた駒を進めて終点の「上がり」を目指して競争する”盤上ゲーム”で原初は”複雑なルールに基づいて二人で競う”「盤双六」と呼ばれるものだったが、江戸時代に盛んになった”升目に当たる所に絵が描かれた「絵双六」になって多人数でも競える、楽しめるスタイル”にとって代わられて現在に至っている。

↓スゴロクの一例 (図はブログ「カルタ・カード・スゴロクで遊ぶ、学ぶ」より引用)
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※インドから欧州に伝播したものは「バックギャモン」という(名前だけしか私は知らない)ゲームになったとされる。

◎「マンダラスゴロク」とは・・
この手法発案者の石井禎(いしいただし)氏(コンセプトデザイナー)によれば・・「発想、構想、創造のための”脳の道具”として、縦軸と横軸を基本に置き、これによってできる四つの象限をベースにして、全体を5X5=25のマスで一つのミクロコスモスのようなものを創る”技法”」が「マンダラスゴロク」。
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前回ご紹介した「マンダラチャート」の場合、ど真ん中のマス目に”目的となる事柄”あるいは”最終的に求める事柄”の言葉 (大谷翔平のマンダラチャートの場合は”ドラ1、8球団”=8球団からドラフト1位指名獲得)などを決めて入れるだけで、残りのマスには”関連する事柄”として思いつく言葉を自由に入れる(当てはめる)ことで完了しますが・・

「マンダラスゴロク」は、ど真ん中のマス目に”目的や求める事柄を入れる”のはマンダラチャートと同じなのですが、全体を構成するのは全25マスであり、各マスは並び方に意味や方向性をもつように配する点が異なるところ。

これをやや具体的に説明するために、石井氏の数ある著作の中の一つである「脳の道具 マンダラスゴロク」(文芸社 2017年12月発行)の裏表紙(カバー)にある”カラー表示のマンダラスゴロク模式図”を利用させてもらいますと・・
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↓マンダラスゴロク模式図
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・模式図中で黄色の表記が縦軸と横軸 (数学ではY軸とX軸)

・縦軸の上側半分を”北軸”、下側半分を”南軸”、横軸の右半分を”東軸”、左半分を”西軸”と(石井氏は)便宜上名付けている。

・縦軸と横軸の交差によってできる四つの空間は、右上赤マス部分を第1象限、左上緑マス部分を第2象限、左下オレンジ色マス部分を第3象限、右下紫マス部分を第4象限と呼ぶ(これは数学における象限と同じ)

・北軸、南軸、東軸、西軸それぞれのアタマの黄色丸部分には各軸の意味を代表する事柄を配する(記入する)。なお南北軸、東西軸のアタマには”二項対峙”する事柄(高い/低い、早い/遅いなど)があたるとは限らないことも多い。

・各象限の4つのマスそれぞれの意味合いは自ずと決まってくる。第1象限を例にすれば、北軸に近い左赤マスの意味合いは、東軸の意味合いにも関係しながらしかし北軸の意味合い寄りになる・・ということになる。これはいわゆるマトリックス図法の場合の”行”と”列”の関係に通じるもの。

マンダラスゴロクを実際に使った例は、石井氏の著作「脳の道具 マンダラスゴロク」に多数掲載されていますので、ご興味ある方は参照下さい。私が30年ほど前にマンダラスゴロクを応用して(基本形とは若干異なりますが)作成したものをご紹介してみます。↓ これは”感動をよぶ商品(モノあるいはコト)を生むために(当時)必要な方向性の抽出”を試みたものです。

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ここでは縦軸、横軸の両端に二項対峙的な言葉を置いていますが、その理由は”感動”というものが”ウェーバー・フェフィナー(フェフィネル)の法則”によって、人間の心と体が”緊張と解放”の間、”能動と静動”の間を行ったり来たりすることによって生まれる、または持続するから。

実際にはこの図の中の大きな矢印方向にあたる四つの”重視”策それぞれをまたさらにマンダラスゴロク化(または後述します「デザインスゴロク」化)して、より具体的な必要素を抽出していきます。

◎「デザインスゴロク」
この手法は故・池辺陽(いけべきよし:建築家・東京大学生産技術研究所建築学教授)氏が考案して1965年頃には発表されていたようです。・・というわけで今般、私がご紹介した手法3種の中ではこの「デザインスゴロク」が最古であり、次に「マンダラスゴロク」その後「マンダラチャート」という発生順になります。

デザインスゴロク手法では、10個のマス(四角または丸など)とその中に入るべき事柄(必要素)をあらわす言葉によって構成され、場合によっては全体を表すキーワードをベースに加えて(下図中のグレー部分)計11の事柄で表すもの。

↓「デザインンスゴロク」模式図 
(「MONOist」のHPより引用)
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池辺氏が実際に”建築デザイン・設計における考慮すべき点”を自らデザインンスゴロクで表現されていて、「目的」、「生活様式」、「組立方式」、「美的条件」、「コスト」、「環境」、「機能」、「材料」、「流通」の9つの言葉をマスに置き、真ん中のマスには(これら9つの要素を十分考慮するのが必須として)「標準」という言葉を置いて計10個のマスを満たしたカタチで発表。

氏いわく、「このデザインンスゴロク上のどのマスから着手してもよいが、全てのマスを通過しなければ(センターの)”上がり”にはならない」・・どうやらこれが”スゴロク”と称する所以のようです。
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なお、先回から続けてご紹介した手法の3種とも"先ずど真ん中に目標事項や究極的に求める事項あるいは大代表的事項など"を置いて(記入して)から周囲のマスの中に入るべき事項を抽出して置いていくことが多いのですが、逆順のこともあり、先に周囲のマスを埋めた事項群から導かれて、ど真ん中のマスに入る事項(言葉)が決まることもあります。
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以上、「マンダラチャート」、「マンダラスゴロク」、「デザインスゴロク」の三つの手法を紹介しましたが、最も利用されているのは(歴史もあるせいか)「デザインスゴロク」で、最も”頭をしぼる”必用があるのは「マンダラスゴロク」でしょう。
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