ありゃまぁー!この文を書いてる最中に、山本由伸までもドジャースに入団決定のニュースが・・
◎ドジャースとドッジボール
ところで私、「ドジャース=Dodgers」の「Dodge」とはいかなる意味か知らなかったので、今更ながらですが辞書をひいたらば・・(1)「(打撃などを)素早く避ける/ひらりとよける、身をかわす」、(2)「(質問、義務などを)言い抜ける、ごまかす、はぐらかす」。・・なので「ドジャース」は(1)の意味をふんでいるのでしょうが、それにしても”dodgeしていたら試合に勝てない”のに不思議な球団名にしたものですが、他の意味があるのでしょう。
ここで辞書には「dodge ball」なる言葉がのっていて、その意味=「ドッジボール」とだけの表記。恥ずかしながらこの歳になってこの遊びの名前の由来を知りました。確かに私はドッジボールではボールを受け止めるより”ひらりとよける”ほうが圧倒的に多かったことを思い出しました。
さて大谷翔平のドジャース入団発表会見では、いつものことながら彼の挨拶や答弁はていねいで心のこもった内容だった。
そこには大谷の細かい”配慮”を感じさせるものが多く在った。それは言葉による表現ばかりではなく服装にも現れていて、ネクタイはドジャーズ色のブルー、そしてそのネクタイとワイシャツの襟の関係も文字通り”隙の無い”着こなし。
加えて、彼が手首にはめていた腕時計。これに私は気がつかなかったのですが、それに注目した人が多かったようで、会見直後からX(旧ツイッター)上では多くの日本人の他に米国のスポーツビジネス経営者のジョー・ポンブリアーノ氏も反応したとのこと。
◎大谷のその腕時計は価格60万5000円
腕時計好きの人たちは大谷のその時計が日本のグランドセイコーであることは瞬時に把握したようで、大谷が日本の代表的な時計を身に着けていることに多くの人が好感を示している中で、さらにその型番名までも判定する人が現れたものの断定はできずに、ある人は「SBGR261」(価格57万2000円)だろうと言い、ジョー・ポンブリアーノ氏は「SBGM221」(価格60万5000円)であると指摘。
そこで私は型番名判定に挑戦 ! ・・ということで、まずグランドセイコーには5大別した”〇〇コレクション”というものがある中でも「エレガント」コレクションの一つであることが分かり、そこからやはり前出の「SBGR261」 と「SBGM221」に絞られるものの、細かい部分が判らないのでその腕時計がなるべく大きく写っている映像を探した結果、朝日新聞の報道写真の中に、ルーペで拡大して見ると文字盤と針がなんとか読めるものがあった。その結果・・
文字盤上には太めの針3本と、かすかに見える1本の細い針、計4本の針を確認できたので、これは「SBGM221」であることが判明した。
実はこの機種は短針、長針、秒針にプラスして24時間表示針を備えているので合計4針あるもの。一方、「SBGR261」は普通の3針である。
◎グランドセイコーと大谷翔平は岩手県生まれ!
セイコーグループの腕時計には、普及品、高級品、ラグジュアリー品などのクラスがあるが、高級品クラスを表す「Grand Seiko」(グランドセイコー)は現在では「SEIKO」ではなく独立したブランドになっています。
このグランドセイコーブランドの腕時計を、部品製造から組立まで一貫生産しているのが岩手県岩手郡雫石(しずくいし)町に在る「盛岡セイコー工業(株)」。ここでは熟練技能士が”ロボットでは無理な超高度技”(例えばある部品の特殊研磨には10年の経験が必要)を注ぎ込んで製作するという”匠の工房”を構えている。
そして大谷翔平は1994年に岩手県の水沢市(現、奥州市)で生まれ、花巻東高校を卒業している・・ということで、同じ岩手県から”世界のトップを目指す”ものとしてグランドセイコーと大谷はリンクするゆえに、セイコーグループ(株)は大谷をイメージキャラクターとして採用契約していて、ただしグランドセイコー以外のハイレベルのセイコーブランド製品の宣伝広告にも大谷を登場させている。
ドジャース入団発表会場で大谷がつけていた腕時計はグランドセイコーブランドの中でメンズ用とされるものの中では最低価格に近い60万5000円。このブランドにはSBGD207という型番の2200万円の高額品もあるものの、大谷は”レザーバンドで上品な感じ”で高価格ではないウオッチを選んでいる。前述のようにグランドセイコーの中の5大別コレクションの中の”エレガンスコレクション”に属する型番を選んでいるから当然の印象となっている。
この大谷の思惑は、高級品だが一般の人でも努力すれば手の届くようなモノがあり、しかも身に着けるのであれば成り金趣味でなく品のあるモノでさりげなく表現したいもの・・それは”努力すれば夢はかなうが、成功しても謙虚であれ”という考え方を示しているように感じる。
こうして、あの場のために大谷が選んだ腕時計には、「親近感を感じる」、「あれが欲しくなった」、「上品さを感じた」などの声がX(旧ツイッター)に書き込まれていたが、(マイクロソフトニュースTHE DIGESTによれば)『米国の有力ファッション誌の「GQ」は「オオタニは7億ドルの契約にあたり、完璧な時計を選択した」、「最もエクセレントな時計をつけていた」と評している』
◎セイコーの腕時計のデザイン指針
セイコーの時計には腕時計の他に置時計や掛け時計その他用途別時計(公共施設用、競技計時用など)がありますが、腕時計は(一品物の超豪華腕時計や遊び感覚腕時計などを除けば)形状やデザインに大きな制約や条件があるために独自性を打ち出すのが難しいことは部外者でもわかる。
そんな中で特に高級腕時計向けを意識した”セイコースタイル”と称する独自のデザイン指針が1960年後半に生まれて1967年に発売開始したグランドセイコーから採用されてきたそうで、同社のホームページによれば・・
『服部時計店のチーフデザイナーが銀座の和光本館に足しげく通い、世界の高級腕時計をつぶさに検分していて、ある重要なことに気づきます。「同じ腕時計でも、キラキラと輝くものもあれば、光がだれているものもある」。腕時計を構成している「面」の形状や張りによって、「輝き」に大きな違いが生じていることを見出したのでした。
「腕時計の本質を究めながら、高級腕時計としての普遍的な価値を作り出すために必要なのは、燦然とした輝きである」そう確信したデザイナーは、外装工場の職人たちとともに、燦然と輝く腕時計を作るべく、研究に着手しました。どういう造形であれば、燦然と輝くのか、いかに美しくできるのか。試行錯誤を重ねた末に作り上げたのが、セイコースタイルでした。 』
「腕時計の本質を究めながら、高級腕時計としての普遍的な価値を作り出すために必要なのは、燦然とした輝きである」そう確信したデザイナーは、外装工場の職人たちとともに、燦然と輝く腕時計を作るべく、研究に着手しました。どういう造形であれば、燦然と輝くのか、いかに美しくできるのか。試行錯誤を重ねた末に作り上げたのが、セイコースタイルでした。 』
その結果具体的な方針として・・3つの大方針とそれに基づく9つの要素が生まれたそうで・・
『大方針ひとつ目は、「平面を主体として、平面と二次曲面からなるデザイン。三次曲面は原則として採り入れない」こと。
二つ目は、「ケース・ダイヤル・針のすべてにわたって、極力平面部の面積を多くする」こと。
三つ目は、「各面は原則として鏡面とし、その鏡面からは、極力歪みをなくす」こと。
※3つの大方針と9つの要素の詳細は・・
◎セイコー時計の設計やデザインに導入した(と思われる)「標準数」
「標準数」とは何かを説明するには長くなるので、大雑把に紹介すると・・高品質な工業製品を低コストで早く生産するために、部品から製品全体にいたるまで”単純化””共通化””標準化”が必要だが、これにさらに美しい形体化(例えば縦横寸法比率が1:約1.6のように「黄金比率」に近い形が出来上がる)もねらえる製品設計やデザインに採用できるように、ある法則(隣り合う数字がほぼ等比関係)に基づいて並べた数が「標準数」で、この数字は数列表のかたちでISO(国際標準化機構規格)とJIS(日本工業規格)で決められていてJISでは「標準数」という表題で「JIS Z 8601-1954」というナンバーがつけられている。AIなどが存在する現在もこの規格がまだ利用されているのか私は知りませんが・・
セイコーが時計造りに標準数を採用していたのではないかと私が思う根拠は・・(今、気づいたのですが)ちょうどグランドセイコーが世に出た1967年だったかに、当時セイコーのデザイナーとしても有名だった清水千之助氏から「デザインにも”標準数”を利用できる」という教えをいただく機会があり、その際に「JIS Z 8601-1954」の規格表の印刷物まで頂戴したことがあり、氏は” セイコーの腕時計のデザインと標準数の関係を明言されなかった”ものの氏の下記のような”理系的経歴”からも推定できるからです。
清水千之助(1929~1987)氏は千葉大学工学部工業意匠課卒、 (株)服部時計店工場精工舎勤務(1955~1967):その間にウルム造形大学(西独)留学、東京造形大学教授、拓殖大学工学部工業意匠学科教授、著書多数: 「工業デザインの実務」、「造形の科学」など、その他「デザイン学研究」誌に「ID(工業デザイン)活動としての標準品設計の意義」の寄稿もある。
実は私、セイコーのデザイナーである知人がいたのですが残念ながら数年前に他界してしまい、生前に”セイコー製品と標準数の関連の有無”を確認しておけばよかったと後悔している次第です。
・・・・・・・・・・・・
「標準数」についての少し詳しい説明はネット上で多数あるのですが、その一つは・・
・・・・・・・・・・・・