徒然G3(ツレヅレジイサン)日話秘話飛話

兼好法師ならぬ健康欲しい私がつれづれなるままに お伝えしたいこと綴ります。 時には秘話もあり!

    ジャンルは不特定で硬軟織り交ぜながら 皆様に何かお役に立てば幸いです

    2023年08月

    ◎「大賀ハス」の種は千葉県で2千年以上眠っていたとされるが!?
    1951(昭和26)年に植物学者の大賀一郎(1883=明治16年~1965=昭和40年)博士が千葉県に在った「東京大学検見川厚生農場(現、東京大学検見川総合運動場)」の地にあった「落合遺跡」の発掘調査をした際に地下の草炭(樹木ではなくアシやヨシなどが水中堆積して炭化したもの)層の下の青土層の中(地表から約5.5m)から3粒のハスの種(ハスの場合は”実”とも言う)が発見された。

    ↓大賀一郎博士
    oogahahakase (2)

    博士はこの種は約2千年前のものと判断したが、これを現代に蘇らせて発芽育成をすべく自宅で試みたところ、種3粒の内の1粒だけが蓮根を形成しだしたので、それを根分けして三カ所(伊原茂氏宅、千葉公園、千葉農業試験場)にさらなる育成を1952(昭和27)年4月に委託したところ、3か月後の7月に伊原氏宅のハスが見事に開花した。 

    ↓大賀ハス
    oogahasu (2)

    この太古のハス開花のニュースは日本のみならず世界中に伝わり、米国のTIME誌にも「世界最古の花、生命の復活」としてカラー写真とともに紹介された。こうして有名になった古代ハスはその後「大賀ハス」と称されるようになった。

    ◎大賀ハス 本当は3千年前かも?!
    実は、この古代ハスの種が在った層のすぐ上の草炭層から丸木舟も出土していたので、その小片を放射性炭素年代測定してもらうべく (この測定法を世界最初に開発した)米国のシカゴ大学へ送った結果、この丸木舟の素材は3075年(プラスマイナス180年)前のものと判明。

    ↓発掘時の土層図(大賀博士のメモを基にしたもの)
    tisou
    (深さ数値は博士のメモでは尺・寸記入だったものをメートル法に変換したもの)

    放射性炭素年代測定用のサンプル木片がこの丸木舟の舟体の厚みの内側のものか外側のものかによって年数値に差が出るが、杉材で厚みが5センチと仮定すれば、内側と外側で約30年の差がでるが当時どちら側の木片を使ったかわかりませんが・・

    ではこの丸木舟が埋まっていた層は”少なくとも(つまり新しくとも)いつごろから形成されたかを考えてみると・・年代測定値の誤差のマイナス値のほうを採用した上で、この舟に使われた木材は伐採直後のものであるだろうことを前提として、測定値が丸木舟の内側の木片測った結果(つまり古い方)だったとして、これを新しい方に振り、またこの舟が20年使われた後に廃棄されたか沈没したとして、その後”草土”となる植物の沈殿物に埋もれだしたとすると・・

    3075-180-30-20=2845(年)・・となって、この丸木舟は新しくとも約2850年前にこの地に在ったということになり・・年代測定誤差を反対にとれば(=古くは)・・3255(年前)となります。

    後に大賀ハスと呼ばれるようになったハスの種は丸木舟が存在した層よりさらに下の層に在ったので、丸木舟より古いとは思われるものの、例えば丸木舟と同じ時代に落ちていた種を当時の人が踏んで、より深い下の土の層まで押し込んだものかも知れず、年代は特定できませんが・・

    現在でも大賀ハスの説明文には「2千年以上前の古代ハスで弥生時代以前のもの」とされることが多いのですが、”弥生時代は約2300年前~約1900年前”とされるので「大賀ハスは約3千年前の縄文時代後期のもの」とするほうが妥当のような気がします。

    ◎博士は大賀ハス発見より以前に中国で古いハスを発見していた!
    大賀博士がまだ若い頃、中国・大連に在った南満州鉄道中央研究所(通称:満鉄調査部)の植物班主任として勤務時代の1927(昭和2)年に、大連郊外の「普蘭店」という地の泥炭層の中から、約300年前のものと推定されるハスの実を採取して発芽させることに成功。これをもとにした論文により東京帝国大学の博士号を取得している。この経験があったればこそ千葉県の東大関連敷地内の泥炭に似た地層でのハスの種の存在の可能性にかけて発掘作業に(68才にはなっていたが)意欲を燃やしたのでしょう。

    ◎大賀ハスは日本各地、世界各地へ。あの水御堂にも !
    大賀ハスは千葉県で発見されたこともあって、現在では千葉県内の多くの公園の池で観られ、千葉市は「市の花」に指定。「検見川大賀蓮」が千葉県指定天然記念物になり、千葉公園では毎年6月に「大賀ハスまつり」が開催されるほど。しかし今や日本全国各地でも観られ、なんと前回のブログでもふれました安藤忠雄氏設計の「本福寺・水御堂」の池にも大賀ハスが植えられています。

    屋根がハス池になっている本福寺・水御堂
    mimdou1

    そして今や大賀ハスは世界150ヵ所に根分けされて花を咲かせているそうです。

    ◎実は大賀ハスの種を最初に発見したのは女子中学生!
    大賀博士が千葉市の地で発掘作業をした際にボランティアとして小学生や中学生も参加していた中で、市立花園中学校の生徒・西野真理子さんが(後に大賀ハスと呼ばれる)ハスの種を一粒見つけたのが最初で、その後に周囲から二粒が追加して見つかり計3粒になった。大賀博士が残しているメモにも”第一発見者として西野さんの個人名”を明記している。

    大賀博士の発掘を手伝う小学生?
    syougakusei

    ・・・・・・・・・・・・
    一本の大賀ハスの開花は4日間。見頃は千葉県では6月中旬~下旬。しかもハス全体の性格として午前中にしか開花は観られない・・というわけで千葉県に住む私なのに、残念ながらこの花をまだ観たことがありません。
    ・・・・・・・・・・・・

    ハス(蓮)の花、その開花時期は地域や種類によってズレがあり、6月下旬から8月中旬頃までとされます。今回はハスの季節にちなんで・・
    lotus1
    (写真は教育出版社「植物図鑑」web版より)

    ◎安藤忠雄氏の設計「本福寺・水御堂(みずみどう)」のハス

    元ボクサーにして独学で建築家となって有名な安藤忠雄氏。
    「安藤忠雄展」パンフより(この展覧会は熱烈な安藤ファンの友人に誘われて私も観ました)
    andoueadao

    氏の作品は国内外で人気あり、国内では「水の教会」、「風の教会」、「光の教会」(以上=教会3部作)、「表参道ヒルズ」、米国の「フォートワース美術館」、最近では「こども本の森・中之島」、などが紹介されることが多いのですが・・

    建築関係者以外にはあまり知られていない?と思われる「本福寺・水御堂」は、兵庫県の淡路島の北端近く(淡路市浦1310)で大阪湾を見下ろす小高い丘の上に建つ鉄筋コンクリートのちょっと変わったお堂。

    平安時代後期に創建された本福寺(真言宗御室派別格本山)に新しくお堂を建てる計画が1980年代末に生まれ、設計依頼された安藤氏は、「従来の寺院建築の大屋根は権威主義の表れであるから、これを排するかわりに”ハスで満たされた水盤のような池”を屋根に見立てて、その下に御堂を置くデザインとした。これにはかつてインドで見たハス池の光景を頭に浮かべながら、お釈迦様の象徴と言われるハスに満たされた“大屋根がわりの池”を頂く御堂のほうがよほど仏教精神にかなっているのではないかと考えた」と述べている。

    こうして1991年に完成したのが・・「本福寺・水御堂(みずみどう)」
    ↓俯瞰写真(楕円形のハス池は長径40m X 短径30m。真ん中の階段を下りて地下のお堂に向かう)(写真はタウン誌「神戸っ子」web版より)
    mimdou1

    ↓ハス(写真中央奥)とスイレンが浮かぶ池の中央の階段を下りる人
    (写真はタウン誌「神戸っ子」web版より)
    hasumidou (2)

    ↓ハス池の中央の階段)
    (写真は「花みどりフェア公式サイト」より)
    mmdou3

    ↓水御堂に向かうための最初の入り口を有する横に長い壁は俗界との境を表す(上の俯瞰写真で右上の直線状部分)
    (写真は「花みどりフェア公式サイト」より)
    mmdou4

    ↓赤色を基調としたお堂内部。本尊の薬師如来の背後から光が差し込んで光背のようになる
    (写真はタウン誌「神戸っ子」web版より)
    mmdou5

    ↓この格子を通した光が本尊の光背がわりとなる
    (写真はタウン誌「神戸っ子」web版より)
    mmdou6

    ↓安藤氏による水御堂設計前のイメージスケッチ
    (タウン誌「神戸っ子」web版より)
    mmdou7

    ◎「バスクリン」ならぬ「ハス・クリン」はいかが?!
    ・・・水御堂を盛り上げるために私が出した案・・・

    水御堂を建てた本福寺。実はこのお寺では、私が勤務していた会社の物故社員の慰霊法要が毎年行われていたのです。

    そこで会社も、水御堂完成にあわせて、話題作りをして盛り上げてさしあげようということになって、私の所属する部署にその方策を考えるよう上層部から指示があったので数人からなるチームが取り組んでいました。

    そこで先ず出たのは、「水御堂」という呼び名は印象力が弱いので、「蓮御堂」のほうが良いと思われるが今さら呼称変更はできないので「水御堂(蓮御堂)」という表現を推すことにしたそうで、その上で色々な案が出ていたようですが、途中で”チームメンバーではない私”へも「何か案はないか」という問いがあったので、私が提案したのは・・

    「ハスの葉からの聖なる水『ハス・クリン』」

    私が子供の頃には「朝露を集めて墨をすり、それで七夕の短冊に願い事を書くと成就する」という”言い伝え”がまだしっかり残っていた。(同時に「字も上達する」という教えもある)

    ただし(地方によってか?)”露を集める方法が二種類”あって、一つは”里芋の葉にのっている露を集める”、もう一つは”ハスの葉にのっている露を集める”。

    どちらの葉も大きく、その表面の撥水性(ロータス効果)によって露がコロコロと玉のようになり葉の中心のくぼんでいる部分に集まる
    lotus-effect
    (↑写真は「国立研究開発法人 物質・材料研究機構」のメールマガジンvol-104より引用)

    ・・という特徴が同じゆえにどちらでも良いのでしょうが、土の畑に在る里芋の葉からの露のほうが相対的には得やすく、池や沼に生えているハスの葉から露を採るのは苦労と危険を伴う。

    そして、”極楽浄土はハスの花が咲き満ちている”、”お釈迦様は誕生してすぐに7歩あるかれ、しかもその足跡にはハスの花が咲いた”という”教え”があることや”仏様はハスの花をあらわす「蓮華」の上ににおわす姿の像や絵画が多い”ことなどから・・

    得難くしかも聖なる”ハスの葉の露“は『ありがたい』ことになり、これを集めてつくられた水(聖水?)に「ハス・クリン」という名を付け、「このありがたい水で墨をすって願い事を書けば成就!」とうたって売り出せば、話題となり参拝者も増え(俗世的ですが)収益にも貢献することが期待できる・・という狙いです。

    さてこの私の提案は、面白いから検討すると言われたものの実現しませんでした。しかも「ハス・クリン」というネーミングは一瞬大受けしたものの有名な入浴剤の「バスクリン」との関係で直ちに却下されました。(私は丁度、本来業務に忙しかったことと、間もなく転勤したので、その後の詳しい経過や結果を把握していませんが、"水御堂のプロモーションビデオ"の製作・提供はしたようです。)

    最近になって知ったことですが、「蓮文化研究会」の会長:南 定雄氏によれば、「蓮は食用としてはレンコンは勿論、蓮の葉茶や実もおいしいが、その他にも”化粧品”や”香水”を化粧品メーカーとともに開発した」・・そうで、「その手があったか!」と思った次第です。
    ・・・・・・・・・・・・

    このページのトップヘ