このブログ発信時点では、ウクライナの港からの農作物輸出が再開されるかどうか怪しい状況で、この先どうなるのか? 船舶による輸送が滞って倉庫には小麦だけでなくヒマワリの種と油までも大量に滞留しているので世界的な食糧危機を招いているが、一方、航空機による物資輸送にも支障がでているはず。
私は、チェリノブイリ原発と、ただ1機しか存在しない世界最大の輸送機「アントノフAn225」がウクライナにあったとは知りませんでしたが、報道写真で”ロシア軍によって破壊されたアントノフ機の無残な姿“を見てショックを受けた。
アントノフAn225には一回り小さいアントノフAn124が存在することは私も知っていたので、225破壊のニュースばかりの中、124は大丈夫だったのか心配したが、これも残念ながら225近くに駐機していたので一部損壊していることもその後に知って二重にショック! しかしウクライナにはAn124が7機もあり、無傷のものもあるそうで少し安心した。
この2機種はその大きさゆえに”チャーターされて”緊急かつ大量または大型の物資”輸送に世界的に大活躍していたので、これから困る企業や地域、国が出てくるのではないかと気になるところ。 この2機種の概要とその活躍とは・・
◎世界最大輸送機「アントノフAn225(愛称:ムリヤ/ムリーヤ)」
↑An225(Wikipediaより)
An225の活躍例
・2008年:サモア沖地震被災地への救援物資輸送
・2010年:ハイチ大地震復興支援物資等輸送(日本の防衛省がチャーター)
・2011年:東日本大震災救援物資150トンの日本向け輸送(フランス政府がチャーター)
・2020年:中国・天津からの医療品をカナダへ輸送
◎大型輸送機「アントノフAn124(愛称:ルスラン/ルスラーン)
全長68.96m/全幅78.3m/最大積載量150t/最大離陸重量405t/エンジン4基
(エンジン1基は4トン、主翼の中のタンクには燃料のケロシン25万リットル、荷室床はチタン製、30トンクレーン内蔵)
An124の活躍例
・1999年:広島電鉄5000系車両輸送
・2003年:自衛隊イラク派遣関連物資輸送
・2010年:自衛隊海外派遣に伴う重機、ヘリコプター(チヌーク)輸送
(防衛省は自衛隊海外派遣に伴うチャーターをその他多数回行っている。)
・2011年:東日本大震災時の福島第一原発事故処理用の注水ポンプ車をドイツから輸送。
・2014年~:ボーイング787型機の一部製造担当の日本工場への機材や部品の輸送に頻繁に飛来。 (中部国際空港着)
・NASAや三菱電機の人工衛星の運搬に多用されている。
・(発生年不詳)世界最大の風力発電機メーカーであるヴェスタス社(本社:米国コロラド州デンバー)が直径67メートルの風車の発電機を受注したが、そのブレード(羽根)(1枚30数メートル)の”成型用の型”が中国の上海にあったものをデンバーに戻す必要が生じ、しかも納期の関係で短時間に実行するためにAn124をチャーター。その結果チャーター発注から72時間で到着(飛行距離約1万キロ)。もしこれが船便なら1ケ月半から2ケ月かかるもの。
◎An225、An124参考
・An225は旧ソ連において”ソ連版スペースシャトル「ブラン」”を運搬するためにAn124(1982年初飛行)をベースにして大型化し、ブランを背負うかたちになるようにアントノフ設計局が設計して作られ、1988年に一度だけ飛行したが、ほどなくソ連崩壊により、その役目は終わった。
↓ブランを背負って飛ぶAn225(米国ではボーイング747がスペースシャトルを背負って飛行)
・ソ連崩壊後はAn225や124をウクライナの「O.K.アントノフ記念航空科学技術複合体」が所有と開発を行っていて、子会社の「アントノフ航空」がAn124と225を大型積載物輸送用にチャーター機とするビジネスを展開している。
・An124はソ連時代からの生産累計は56機で現存は52機。内26機はロシアが軍用機として使用中。残り26機が民間用で、7機がウクライナのアントノフ航空所有。12機をロシアのヴォルガ・ドニエプル航空が所有。このヴォルガ・ドニエプル航空のAn124は2010年の自衛隊海外派遣に伴う重機、ヘリコプター輸送時やボーイング社の787日本製造工場への部品等輸送などにチャーターされている。
・ロシアによって破壊されたAn255は修復不可能だが、実は別に同型のもう1機が70%まで製造途中だったのでこれを完成させるとウクライナ政府が発表している。
・超大型機のため対応空港が限られるが、日本では成田、仙台、中部(セントレア)などの空港、米軍横田基地にも飛来している。中部国際空港は途中給油目的の場合も多い。米軍もチャーターすることが多くて横田にも多い。
・超大型機のため対応空港が限られるが、日本では成田、仙台、中部(セントレア)などの空港、米軍横田基地にも飛来している。中部国際空港は途中給油目的の場合も多い。米軍もチャーターすることが多くて横田にも多い。
◎世界の大型輸送機比較表 (Wikipediaより)
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ロシアによるウクライナ攻撃が早急に停止されて、アントノフ航空は勿論、今は利用が避けられているだろうロシアのヴォルガ・ドニエプル航空も加わって再び世界の重要な物資輸送のためにAn225と124が飛び回る日が待たれる。
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