(前回の続編として「挿絵など、純粋絵画ではないが大切な絵の色々(2)」となるものです)
前回に、主に児童向け絵本には具体(具象)的、写実的な挿絵の必要性を述べましたが、今回は、より年齢が上の子供から大人に至る層までを対象とした“純粋絵画ではないが、何らかの有効性を意識して描かれた、写実的(リアル)で魅力的な絵”をご紹介。
◎”サンタは赤い服”を”定着”させたコカコーラの広告絵
”サンタクロースは赤い服を着て、白いひげをはやしている”というイメージが”定着”したのは米国の「コカ・コーラ社(THE COCA-COLA COMPANY) 」が1931(昭和6)年から毎年のクリスマスキャンペーン広告の絵に登場させてからである”という説は間違いないようだが、かと言って元祖ではなく”赤い服・白いひげの姿の絵”そのものは、それより以前に米国の雑誌には赤系色の服が描かれていたし、日本でも1914(大正3)年の雑誌「子供之友」には赤い帽子に赤い服のサンタがすでに登場していたそうだ。
↑我が家にある”歌って踊る(電動)サンタ人形”たち
しかしながらやはり、コカコーラ社の広告絵の影響が大きかった理由は、広告アート担当者だったハッドン・サンブレム氏が描いた愛嬌のあるサンタがリアル感溢れて身近に感じさせたもので、しかも毎年のクリスマス時期の広告に、前年とはちがった動きを表した姿のサンタを登場させるということを30数年つづけたからにちがいない。
勿論コカコーラの広告に採用されたのはサンタばかりではなく、その他にも有名な画家ノーマン・ロックウェル氏らに依頼した絵なども使用している
◎ノーマン・ロックウェルの米国市民生活活写の絵 !
ノーマン・ロックウェル(1894~1978)(以下文中N.ロックウェル)は米国のイラストレーターとも画家とも言われ、絵の題材は米国市民の日常生活場面を切り取ったものが多く(晩年は社会問題にふれるものも若干あったが)、その画風は一見、写実的だが”遠くのモノ・人も近くのそれとほとんど同じような明瞭さ、強さで描き”また”影をあまり描かなかった”ので「超写実的」とも言われる。これは言わば”説明的な絵”でもあり理解しやすかったので、彼は芸術家とは認識されなかったものの人気が高かったのだろう。
彼の作品の中でも最も多く大衆が目にしたのは雑誌「サタデーイヴニングポスト」(以下文中「ポスト」)の表紙絵で1916年から1963年までの48年間続いた。その他「ルック」誌掲載用の絵や多数の会社の広告絵も手掛けた。
↓N.ロックウェル本人を描いて「自画像」という題にした「ポスト」表紙絵
↓題名「婚姻届け」(「ポスト」表紙絵)
↓題名「知る権利」(「ルック」誌掲載の絵)
そして前述のように、N.ロックウェルがコカコーラの依頼で描いた絵がある。
↓コカコーラ広告用の絵 (画集書籍LE MONDE MERVEILLEUX「DE Coca-Cola」より)
◎説明的な”日本の物語絵巻の絵”や”各種の図鑑の絵”
N.ロックウェルの絵には説明的表現の性格が含まれていると前述しましたが、これと同様な性格を持つのが”日本の物語絵巻の絵”であり、例えば平安貴族の館の中の様子は・・
1. 奥に居る人や物も手前に居る人や物と同じ大きさに表すために、西洋画のような《消失点をもった遠近法》の手法をとらずに、奥の部屋も手前の部屋と同じ広がりを持たせて、人・物を配置する。
2. 奥の人・物を空気遠近法のようにぼかすことをしない。
3. 影をつけない、描かない。(伝統的日本画の特徴)
↓「源氏物語絵巻 夕霧」(復元模写版 徳川美術館所蔵より引用)
こうして見ると、N.ロックウェルの絵には上記2と3に通じるところがある。
この2と3の描法を徹底するのが”各種の図鑑の挿絵”であることは言うまでもないでしょう。しかし動物図鑑、植物図鑑、飛行機図鑑、などなど多種多様にあるものの、なかには絵よりも写真を使う方が手っ取り早い分野もある一方、写真よりも絵で説明する方がわかりやすいのが”植物”です。
ところが絵でも写真でも表現が難しいのが「岩石」「鉱物」でその図鑑は存在するものの、実際は、”ある実物の岩石の名称を調べようとして図鑑を見ても、似たような種類が複数存在する場合は、図説だけでは判定が難しい”ことが多いもの。それは微妙な光沢や手触り感の相違、比重の違いも判断要素になるからで、ゆえに「岩石」「鉱物」の場合は実物(小片など)標本も必要になる。
◎ボタニカルアート
写真よりも絵で説明する方がわかりやすいのが”植物”と前述しましたが、古代から薬草は重用されたが、”ある薬草には類似した毒草がある”という場合もあるので詳細な図説は必須だったという状況から、精密植物画の歴史は古く長い。その後、薬草に限らない植物全般が描画対象となっていたものが、西欧では19世紀になると鑑賞対象にもなり、「ボタニカルアート」(botanical art=植物学的芸術)と呼ぶジャンルが派生した。
(詳しくは・・https://biz.trans-suite.jp/26666 )
「ボタニカルアート」たる条件4ケ条というものがあるそうで・・
1. 植物の外観特性忠実描画
2. 実物大
3. 背景無し
4. 人工物(花瓶、植木鉢など)無し
私が思うに、大切なことが抜けている・・それは・・
5. 影をつけない
私が思うに、大切なことが抜けている・・それは・・
5. 影をつけない
↓例 (biz.trans-suite.jpより引用)
↓例 (www9.plala.or.jpより引用)
昆虫好きな有名人と言えば、先ず「昆虫記」のファーブル、自作特殊レンズ使う昆虫写真家の栗林慧、NHKのeテレで「昆虫すごいぜ」という番組を持つ俳優の香川照之、個人で毎年5千匹も育てる中で世界最大のカブトムシを育てた俳優の哀川翔、
(他にもおられるようですが割愛して)大トリは手塚治虫。ペンネームは昆虫の「オサムシ」からとったというほど昆虫好きの手塚が中学生の時に描いた非常に緻密な昆虫標本図が残されている。私がその存在を知ったのは、今から35年ほど前だったか?に雑誌「BE-PAL」の中で特別カラーグラビアの折込ページに掲載されたのを見たからで、カリスマ・マンガ家の別の素養を知って驚きました。
(他にもおられるようですが割愛して)大トリは手塚治虫。ペンネームは昆虫の「オサムシ」からとったというほど昆虫好きの手塚が中学生の時に描いた非常に緻密な昆虫標本図が残されている。私がその存在を知ったのは、今から35年ほど前だったか?に雑誌「BE-PAL」の中で特別カラーグラビアの折込ページに掲載されたのを見たからで、カリスマ・マンガ家の別の素養を知って驚きました。
↓手塚治虫が中学生時代に描いた昆虫図
(画像は、ブログ「ガゾウ (livedoor.jp)」より引用)
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次回も、続々編の「挿絵など、純粋絵画ではないが大切な絵の色々(3)」で魅惑の絵師たち紹介です。
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