いよいよ梅雨の時期となって湿度の高い日が多くなります。そうでなくとも日本は湿気が多く、これをうまく利用した文化もある一方で困る面も結露、カビ、錆などもあるが他にもあり、それはのちほど。
◎日本だけの「ニホンコウジカビ」のおかげ
湿気が多くて出るカビには有益・有害の両面ありますが、有益と言えば、(青カビから作られる抗生物質であるペニシリンの話はここではおいといて)月光仮面ならぬ「発酵仮面」の異名をもち、テレビにも時々出て著書は100冊をこえるという小泉武夫・東京農業大学名誉教授によれば、「日本を含む東アジアや東南アジアでは湿度の関係でカビや菌が多いが、カビの一種である麴、それも日本にしか生息しない「ニホンコウジカビ」による発酵作用を利用して作られるのが日本酒、焼酎、味噌、醤油。ヨーロッパでは地中海性気候のためにカビ使用食品は、わずかにカマンベールチーズ(白カビ付着)とゴルゴンゾーラなどのブルーチーズ(青カビ付着)くらいしか無い。」
↓小泉武夫氏(77才)


◎漆器や「金継ぎ(きんつぎ)」の漆に必要な湿気
「金継ぎ」とは”割れたり欠けたりした器や皿(陶磁器が主流だが、漆器、ガラス器もあり)を漆で接着した後に金粉(または銀、プラチナ、錫などの粉、または顔料)でお化粧して仕上げる手法で、”もったいない精神と美意識が結合した”ものとして海外でも注目されている。ここで言う”美意識”とは、日本の陶磁器においての”「景色」を愛でる”と称する所作にあらわれていると言えよう。
実は、湿気にちなんだ今回のテーマを選んだきっかけは、「金継ぎ」製作歴25年というベテランの知人が作品を紹介してくれたことに加えて、それとほぼ同時期にテレビで『近年「金継ぎ」がちょっとしたブームで、さらにコロナ禍による巣ごもり時間に「金継ぎ」にトライする人が増えて、東急ハンズでは関連商品の売り上げが例年の1.7倍(だったか?)にもなっている』というニュースがあったから。
漆は空気中の水分と結合して固まるという性質がある。「金継ぎ」に限らず漆器などに使われる”漆”または”漆器”は英語では”japan”(磁器は”china”)と表現されるのは・・チョイと蛇足になりますが、実はこの後に続く文章を、私の旧知の情報に基づいて・・『元々、漆は中国が元祖なのに、日本の気候の方が有利だったために、中国よりも漆塗り品が多種多量に作られて、日本が”お株を奪った”かたちになったから』・・としていたものの、ここで改めて日中の漆にまつわる年代を再確認したところ、なんと世界最古※の漆塗りの品が近年日本で発見されて、”漆は日本が起源”説が有力になっていることが判明。よって前記『』内文章は没!
※北海道函館市・垣ノ島B遺跡から出土の漆塗り品(下写真)が放射性炭素C14年代測定法で約9000年前のものと判明。対する中国では最古は約8000年前とされる。
↓頭から脚にかけて身に着ける副葬品の肩当ての部分で軸糸自体を漆で染めたと思われる物。
(写真は「うるしの國・浄法寺」のHPより引用)


※金継ぎ技法の一例は・・
https://www.starbucks-kenpo.or.jp/my_wellness/mindset/list12.php
◎瞬間接着剤(アロンアルファなど)も湿気で固まる
1963年に登場したアロンアルファの宣伝文句は「1滴1秒、ちからは1トン」。


シアノアクリレートという主成分は主に空気中の水分または被接着物表面のわずかな水分と反応して固まる。したがって乾燥した冬季には接着しにくいことがあるので注意が必要で、私は経験的に冬季は接着物にハーハーと息を吹きかけて瞬間接着剤を塗布する。
また接着力を確保しようとして瞬間接着剤を分厚く大量に使用すると空気中の水分に触れない部分が多くなり、結果として固まりにくいので逆効果である。
そして手指などは若干の湿り気があるからよくくっついてしまう。
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次は、湿気が多いと困ることを少しとりあげてみました。
◎塗装時に湿気多いと表面が白化する
塗装直後の表面が艶は消え、白っぽくなる現象が起きることがあり、これを「白化(現象)」または「ブラッシング」という。
その原因は塗装面から急激に揮発成分が抜ける際に、気化熱がうばわれることによって表面温度が下がって空気中の水分が結露して塗装表面に付着して”目に見えないほど細かい凹凸が出来て”それが白っぽく見える状態になる。この凹凸は結露水分が蒸発しても残るので白さは消えない。
塗料の種類によって、含まれる溶剤の気化(揮発)速度は異なり、速いほど気化熱を奪いやすいので、例えばラッカーは白化が出やすく、一般的ペイント(ペイントうすめ液を使う塗料)などは出にくい。
勿論、この白化現象防止のために工業製品の塗装工程では、湿度と温度は管理されているが、一般の人などが塗装する場合は次のような対策をとる。
1) 雨の日(気温が低く湿度が高い日)の塗装は避ける。
2) 「リターダー」(乾燥遅延剤)を塗料に少量混入して気化速度を遅くする。
その他やや本格的には「温風低圧塗装機」の使用や「エアドライヤー付きコンプレッサー」を使う方法がある。
市販されているスプレー缶入り塗料はラッカーが多く注意を要しますが、その他レザークラフトで皮革作品の仕上げにハケ塗りなどして使う艶出し剤もラッカーであり、レザークラフト用品の老舗「株式会社 誠和」の皮革艶出し剤の注意書きには「雨天・湿気の多い日は出来るだけ避けて下さい」とある。
↓SEIWA革の艶出しラッカー

市販されているスプレー缶入り塗料はラッカーが多く注意を要しますが、その他レザークラフトで皮革作品の仕上げにハケ塗りなどして使う艶出し剤もラッカーであり、レザークラフト用品の老舗「株式会社 誠和」の皮革艶出し剤の注意書きには「雨天・湿気の多い日は出来るだけ避けて下さい」とある。
↓SEIWA革の艶出しラッカー

◎瞬間接着剤も湿気多いと表面が白化する
同じ白化でも、瞬間接着剤の白化の過程は塗装の場合のそれとはちがい、瞬間接着剤の表面から急激に揮発した成分が空気中の水分と結合して、微細な粒子となって再び瞬間接着剤の表面に付着する結果、それが白く見える状態になる。
実は、この白化が見られる状態というのは、瞬間接着剤の使い方に無駄がある場合に起こるもので、接着物どうしの間に適量の瞬間接着剤が塗布されていれば白化は起こらず、必要量以上の塗布で瞬間接着剤がはみ出した部分に白化が起こる。
◎欧米製のスピーカーの名器も日本の湿気で音質変わる
オーディオのスピーカーのコーンの材質には、紙の他にプラスチック、発泡金属、ケブラー、木、竹などがあるものの、やはり紙は必要にして十分の良さがあり、欧米の紙コーンを使ったスピーカーの名器のメーカーが「これがベスト」とした音質も、日本に輸入されて1年も使用すると日本の湿度の高さによって微妙に音質が変わってしまうと言われる。
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逆のような事例では、日本の琴を米国のカリフォルニアの録音スタジオで演奏してみたら、日本での音とは違う響きになってしまったという。やはり琴は日本の湿気の中で活き、カリフォルニアのような乾燥したところでは別物になるようで、それもその筈、琴に使われている桐材はとにかく湿気の吸排性に優れているから桐の箪笥は梅雨などの雨の日は吸湿で膨張して本体と引き出しの隙間は無くなって衣類を湿気から守り、逆に天気に良い晴れの日は隙間ができて通気するほどだから。
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私は昔、仕事上でだいたい手に持てるくらいの大きさの物にラッカーでスプレーガン塗装することも多かったのですが、雨の日には(前述のように)ラッカーにリターダーを混ぜていたものの、目分量だったので、ある時にある物をブルーに塗装する際にリターダーを多めに入れてしまったところ、透明感のある青色のまるで陶器のような仕上がりになって、満足感を得たところが、それが1日経っても、10日経っても塗装表面が固化しないので困ったという経験があります。
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このブログ記事を書いている最中に、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産登録される見込みとなったニュースが流れてきましたが、是非その文化紹介の中に漆の存在を入れてほしいものです。
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