「鬼滅の刃」ファンの皆さん御免! 表題の「真菰」とは、鬼滅のストーリーの中に出てくる少女の「真菰」ではなく、植物の「真菰」のコトなのです。「なんだ!ダマシか!」と言わずに、まあ お読みください!
今回は納豆関連の第3弾になるもので、実はその題名として決めていたのは・・
「納豆作りはマコモ、ススキ、出刃包丁、ヨーグルトメーカーで?!」だったのですが
「鬼滅の刃」に「真菰」の名が出ていることを知ったので急遽題名変更したわけで、悪しからず。
前編でも述べましたように、納豆作りの基本は大豆と納豆菌に適温と適湿度があればよいもの。その納豆菌が自然に存在している材料として昔から圧倒的に使われてきたのが“稲藁(ワラ)”で、現在でも“藁づと”に包んだ格好で、ごく一部のメーカーで作られています。しかし今は人工的に培養された納豆菌を使って、“藁(わら)づと”を使わずに製造されることがほとんどです。
↓〈藁づと〉に入ったまま売られている納豆
↓〈藁づと〉に入ったまま売られている納豆
ところで「納豆菌」は日本だけで使われる呼称で、本来は“枯草(こそう)菌”と呼ばれるもので、稲ワラ以外の特に“イネ科” の植物の“真菰(マコモ)”※や“ススキ”などにも存在するので、最近、これらを使っての納豆作りの試みが出現しています。
※真菰(マコモ)とは・・イネ科の多年草で日本では全国の沼、湖、河川の水辺に生え、成長すれば2mくらいの高さになる。太い新芽はマコモダケと称して食べられる。『古来、マコモは神聖なモノとされ、出雲大社のしめ縄、日本酒の酒樽のこも被り、お盆の際のお供えをのせる盆ござ、などはマコモでできている。』(『』内は「株式会社マコモ」のHPより引用)
↓マコモ(画像はwikipediaより)
↓葦(アシ/ヨシ)も水辺の植物だがマコモとは葉の長さと葉の付き方が違う
(画像はwikipediaより)
◎真菰(マコモ)で納豆を作る
A)マコモの葉の乾燥チップと大豆を混ぜて作る
「大和ファーム」(山梨県北杜市)は、一般家庭でも作ることができるように「レシピ付きマコモ納豆セット」を販売している。その内容は、乾燥マコモの葉のチップ10グラム+大豆100グラム+レシピ。
この会社は、健康を考えて、商品の材料は全て“無農薬、化学肥料不使用、日本在来(=遺伝子組み換えでない)種の使用”をモットーにしているので、農薬の付いた稲ワラを使わずに自家栽培のマコモとそれに自然付着している納豆菌を使い、大豆も「借金なし大豆」という埼玉県の秩父地方で大正時代から作られている在来種を使っている。出来上がりは“立派な糸をひく納豆”
↓「レシピ付きマコモ納豆セット」2700円(税込)
B)マコモの葉の粉末に納豆菌を追加して大豆と混ぜて作る
「素輪花(そわか)」(三重県四日市市)は、同県菰野(こもの)町産のマコモの葉の粉末に納豆菌を追加して、やはり同町産の大豆「ふくゆたか」と混ぜて発酵させた「まこも納豆」を販売。
↓「まこも納豆」40グラム3パック 198円(税別)
↓「まこも納豆」中身(やや緑のマコモ粉末が見える)
◎ススキで納豆をつくる
一般の人が納豆の自作を試みようとすると、稲ワラよりも比較的に入手しやすいススキが選ばれる。そのためにネット上では“ススキを使った納豆作り” の紹介が沢山見られます。以下にその一例を引用します(ブログ「オトコ中村の楽しい毎日」より)
①枯れススキならそのまま、青い葉のススキなら刈った後に枯らしたものを用意。
②ススキを10分くらい煮沸(雑菌は死んでも納豆菌の胞子は100度では死なない)
③ポリエチレン製などの適当な容器に適当な長さに切ったススキを底に敷き詰め、その上に煮た大豆を敷き詰め、またその上にススキを敷き詰める。
④大きな発泡スチロール製ボックスに50度くらいのお湯をはり、その中に先の容器を浮かべる。
発酵には酸素も必要なのでススキと大豆が入った容器の蓋は少しあけておき、外側の大きなボックスの蓋は保温維持のために閉めておく。(発酵のためには中身を40~45度くらいに維持する)
⑤約1日半で納豆らしくなるが、アンモニア臭を消すためにも冷蔵庫に入れてさらに2日間置いて完成。
ススキの爽やかな香りも加わっておいしい。
◎出刃包丁を突き刺して作る納豆?!
食物史研究家の永山久夫氏の著書「なっとうの神秘」には氏が日本中を踏査して得られた“各地の納豆の伝統的な作り方”が50例くらい紹介されているが、中には科学的根拠はないものの、より上手においしく出来上がることを願う思いが込められている方法もあります。例えば・・
①「出刃なっとう」
山形県の出羽三山のふもとで作られていた納豆で、煮大豆を熱いうちにワラづとに詰めたものを10本くらい束ねてワラくずで包み、それを更にムシロで包み、その両端を縛りあげたら納屋などの天井に吊り下げる。その際に胴体の真ん中に出刃包丁を突き立てておく。その理由を村のお婆さんが語るには・・「納豆作りのコツは、ワラづとに汗をかかせることだ。出刃包丁を突きつけてみろ、人間だってびっくりして汗さかくだろ、納豆だっておっかねーからジワジワッと汗かくだ。そこで丈夫な糸を引くいい納豆ができるわげだ。」
山形県の出羽三山のふもとで作られていた納豆で、煮大豆を熱いうちにワラづとに詰めたものを10本くらい束ねてワラくずで包み、それを更にムシロで包み、その両端を縛りあげたら納屋などの天井に吊り下げる。その際に胴体の真ん中に出刃包丁を突き立てておく。その理由を村のお婆さんが語るには・・「納豆作りのコツは、ワラづとに汗をかかせることだ。出刃包丁を突きつけてみろ、人間だってびっくりして汗さかくだろ、納豆だっておっかねーからジワジワッと汗かくだ。そこで丈夫な糸を引くいい納豆ができるわげだ。」
②「姫なっとう」
福島県で今も残る作り方で、ワラづとに詰め込む煮大豆の真ん中に、ワラを簡単に結んで作った“お姫様”を入れておくもの。古老が語るには・・「ワラのお姫様を煮豆の“むこ殿”に抱かせるわげだ。温けえワラ床で一晩寝れば、ただの煮豆は粘っこい糸をひくようになって、お姫様の初床で納豆も上出来だっぺよ。」・・しかしこの方法は実は理にかなっていて、通常は煮豆をワラづとで外から包むのだが、それに加えて煮豆の中にもワラを入れて発酵をより効率化しているわけだ。呼び名は違うが同様の納豆製法は岩手、山形、茨城、千葉など各県にもある。
※上記①、②は画像とも永山久夫氏著「なっとうの神秘」より抜粋引用ですが、「姫なっとう」の“姫”とは、男女の「姫始め」の場合の“姫”のニュアンスですね。
福島県で今も残る作り方で、ワラづとに詰め込む煮大豆の真ん中に、ワラを簡単に結んで作った“お姫様”を入れておくもの。古老が語るには・・「ワラのお姫様を煮豆の“むこ殿”に抱かせるわげだ。温けえワラ床で一晩寝れば、ただの煮豆は粘っこい糸をひくようになって、お姫様の初床で納豆も上出来だっぺよ。」・・しかしこの方法は実は理にかなっていて、通常は煮豆をワラづとで外から包むのだが、それに加えて煮豆の中にもワラを入れて発酵をより効率化しているわけだ。呼び名は違うが同様の納豆製法は岩手、山形、茨城、千葉など各県にもある。
※上記①、②は画像とも永山久夫氏著「なっとうの神秘」より抜粋引用ですが、「姫なっとう」の“姫”とは、男女の「姫始め」の場合の“姫”のニュアンスですね。
◎枯葉発酵熱で納豆発酵用の保温
煮大豆発酵用の保温も“自然の力”利用する方法で、テレビ番組「所さんの目がテン」(日本テレビ系列:2020年5月31日放送)で紹介したもの。その手順は・・
①大型の発泡スチロールボックスに枯葉を敷き詰め、その上に米ぬか(窒素が豊富)をまく。
これによって発酵促進されて温度が上がる。
②その上にビニールシートなどを敷いて、その上に煮大豆が入ったワラづとを並べ、蓋をして保温。
これでボックス内40度以上が得られて、結果は立派な糸をひく美味しい納豆ができた。
↑画像は「所さんの目がテン」より引用
↑画像は「所さんの目がテン」より引用
◎ヨーグルトメーカー使えば簡単に納豆出来る!
ここまで述べてきましたらお分かりのように、最も面倒なのが発酵時の温度維持管理。自作派の方は、電気コタツや電気足温器などを使ったりして苦心しています。理想的には発酵開始時と発酵終盤時には温度を変える必要があるそうですが、そこまでしなくとも家庭で簡単に納豆が作れるのが“納豆用の発酵温度が設定できるヨーグルトメーカー”を使う方法。ヨーグルトメーカーのパイオニアである「タニカ電器」(岐阜県多治見市)の「ヨーグルティアS」を使えばヨーグルトだけではなく納豆も簡単にできるということで、同社お勧めの方法が公開されています。(1分間の動画説明付き)
作り方動画→自家製・納豆の作り方|すばる屋 (subaruya.com)
作り方動画→自家製・納豆の作り方|すばる屋 (subaruya.com)
↓ヨーグルティアS(同社HPより)
ここでは少量の納豆そのものを納豆菌の供給用に使っていますが、代わりにススキの葉を使ってみるのも面白いのではないでしょうか。
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飛話:「真菰(マコモ)」という言葉を聞くと、私は真っ先に頭に浮かぶのが石原裕次郎と浅丘ルリ子が主演した映画「夕陽の丘」(1964年公開、監督:松尾昭典)の同名の主題歌(5番ある内の3番)の歌詞で「真菰の葦は風にゆれ 落ち葉くるくる水に舞う ・・」というのですが、今考えると真菰と葦が同一視されているようで変です。
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