◎アキバのパーツ屋が無いとロケットも飛ばない!?
今や家電量販店の各地への進出で あるいはネット販売などで 家電製品は どこでも購入できるようになりました しかし電気・電子部品(通称:パーツ 例えばコンデンサ 抵抗 IC 真空管 配線用リード線など)は家電量販店では売っていませんし ネットでは一部買えても 目的にぴったりの部品を見つけることは難しい状態です・・これを解決できるのがアキバのパーツ屋です
私も高校生時代に アンプ製作で 部品探しに三日連続でアキバに通ったこともありました
ところで アキバ以外で電気・電子の街と言えば 大阪市中央区の日本橋※が有名で 「電気のまち でんでんタウン」というキャッチフレーズで約40店舗ありますが 残念ながらパーツ屋はごく僅かしかありません(※日本橋は大阪では「にっぽんばし」と読み ゆえに日本橋1丁目は通称「日本一」)・・というわけで・・
電気・電子を使った新製品のために試作品を作ろうとする 色々なメーカーの人たち あるいは 電気・電子を使って実験を行おうとする大学や研究機関の人たちが必要とする部品はアキバで調達することが多いものです
今年2019年5月4日に打ち上げ成功で話題になった 民間製の小型ロケット(ホリエモンこと堀江貴文氏が出資する 宇宙ベンチャーのインターステラテクノロジズ=ISTの「MOMO3号機」)にはアキバで調達した部品が多く使われているそうです
撮影:白井伸洋氏
そして アキバと筑波研究学園都市を最短45分(1190円)で結ぶ「つくばエクスプレス」に乗って 各種研究機関から多くの研究者が部品調達に来ています
新型車両TX-3000系電車の外観イメージ(画像:首都圏新都市鉄道)
・・という訳で アキバのパーツ屋は 国家にとっても重要な存在なのです
アキバの街でパーツ屋が 集合している建物がいくつかあって それぞれに名前があり・・「ラジオスーパー」「ラジオガーデン」「ラジオデパート」などです もう一つ「ラジオストア」というのもありましたが残念ながら2013(平成25)年11月30日に閉館しました 残ったパーツ屋さんには 何としても存続を切望せずにはいられません
◎「ヤマギワ」のロゴマークは亀倉雄策氏のデザイン
アキバの電気街が隆盛を極めた頃 中には品格のある店舗がいくつか存在しました その筆頭が「山際電気(ヤマギワ) 現YAMAGIWA」で その他 「山田照明」「シントクエコー」などでした
「ヤマギワ」は昔も今も 商品陣容をほぼ照明器具に特化していますが アキバに店舗を持つ会社としては異例と言える・・“有名グラフィックデザイナーの亀倉雄策氏に依頼してロゴマークを作った”のです
1966(昭和41)年に亀倉氏作成のマーク(正確にはコーポレートロゴマーク)が下図上段です
※当図はモノクロですが 当初はアタマの”角が丸い十字のような部分は紺色がベースで 中に黄色の放射光のような細線”というデザインでした
しかし近年 ヤマギワは経営苦境に陥ったため 現在は 電子部品メーカーの「MARUWA」の完全子会社となり 2014(平成26)年に 再び有名デザイナーの佐藤卓氏にマークを改作依頼して 現在使用されているものが上図下段です・・前者よりアタマの図を小さくし アルファベットの字間を広げ カラーはモノクロです
現在 YAMAGIWAは実店舗を持たないもののショールームは3都市にあるという変わった営業スタイルですが オンラインショップ(ネット販売)に注力しています
その扱い品目は やはり照明器具がメインですが その中でも内外の有名なデザイナーの手掛けたものが多いのが特色です
一例は・・NHK朝の連続ドラマ「まんぷく」で安藤サクラ演じるヒロインの今井福子が勤めるホテルのフロントのカウンターに置かれていたフランクロイドライトがデザインした照明スタンド・・
ライトがデザインしたライト
「TALIESIN(タリアセン)1」74,520円(税込み)
「TALIESIN(タリアセン)1」74,520円(税込み)
さてヤマギワ以外にも 品格があった「山田照明」はアキバの街の北端とも言える地に 昔も今も在り ケバケバしい看板など無く ホームページでも高い意識のコンセプトをあげています この会社の最大のヒット作は・・
「ゼットライト」 1954(昭和29)年に登場してから改良を続けながら65年の長きにわたるロングセラーです
そして大型電器店「シントクエコー」はと言えば 昔のアキバで食事をしようにも ちょっとした店が無かった時代に このビルの上層階に ”正装をしたウエイターがいるレストラン”がありました そして一階には某放送局のサテライトスタジオもあったシャレた店舗でした
現在はゲームの「SEGA」の店舗になっています(下写真)
◎亀倉雄策と言えば1964東京オリンピックのポスターが超有名なのですが・・
ここからはアキバから飛んでしまう”飛話”ですが・・(文中敬称略)
亀倉雄策(1915=大正4年~1997=平成9年)は前述のように当時有名なグラフィックデザイナーで 代表作が1964年の東京オリンピックのポスターです
但し 図や写真を使ったデザインは亀倉作ですが 文字デザインは 別のやはり某有名デザイナーの作だそうです
“文字の書体とその文字を並べるデザイン”を「レタリング」または 最近では 本来の意味から拡大した言葉として「タイポグラフィー」とも言いますが 文字の並べ方の基本は・・文字が複数並んだ場合に 全体的に見て “文字どうしの間隔”が“感覚的に等しいか” です
その観点からすると このポスターのレタリングにおいては 英文字の並べ方に少し難点があると言われます・・パッと見て KとYの間が広いですね その他細かい点にも問題があると言えるでしょう
これらは連作で 大きな赤丸のポスターが第一作目で1961(昭和36)年 つまり58年前のことでした この事例も影響したのか・・1970(昭和45)年に開催された「日本万国博覧会(大阪万博)」では 英文字を使った各種の表記(レタリング)は(以下 私の記憶があいまいなのですが) 英語圏の外国人の専門家に“任せた”か“指導を得た”か どちらかの方法で行われています
半世紀前では日本人の英文字レタリングのレベルが未熟だったのでしょう
飛んで 2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」のエンブレムのデザインは ご存知のように すったもんだの末 野老朝雄(ところ あさお)氏作のデザインに決定しました
野老朝雄と作品のエンブレム(出典:Tokyo2020)
今回のエンブレムではTOKYOのレタリングは良くなっていますが 惜しむらくは 文字太さがやや細いことで 遠くから見た際の判読性がやや劣ることです
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