近年、なにかと「持続可能性(サステナブル)」が重視される中で、かつて日常的によく使われていた素材が主に石油由来のものに置き換わってきたものの、持続可能性があるゆえに再び復活して採用されることが増えてきた。その例として”私的に注目するもの”を少しとりあげてみた。

◎「セロハン」再登場
つい最近のこと、ある集会で出されたお菓子の中に”ひとくちチョコレート”あり、手にとってみたら透明な包み紙のなんとなく指先にしっとりと馴染むような懐かしい感覚は・・もしかしてセロハンか?と思ってよく見ると、透明な中に一部文字印刷で「個包装紙:セロハン」とある。「やはり」と思うと同時に、このセロハンの触感を知らない若い人たちは多いだろうとも思えた。
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包み紙をのばすと「個包装紙:セロハン」と印刷あり
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セロハンの製造工程は・・木材→パルプを粉砕してセルロース→水酸化ナトリウム、二硫化炭素を加えてビスコースになる→スリットを通して薄い膜→硫酸で中和→セルロースに戻る=透明なセロハン紙・・となる。

※セルロースは植物の細胞壁や植物繊維の主成分であり、全ての植物の1/3の量を占めることになり、これは地球上でもっとも多く存在する炭水化物。

※ビスコースをスリットではなく、細い穴から繊維状にとりだしたものが「レーヨン」(別称:ビスコースレーヨン)

セロハンの特長と用途
・透明、光沢。
・非帯電性でゴミや埃が付かない、細菌通さないなど衛生的→食品包装材料
・飴などを包んで両端をねじったものが勝手にほどけない。
・紙なので古紙リサイクルできる。
・土やコンポスト処理では水と有機物に分解される。
・燃焼時の発熱量はプラスチックより少なく、有害ガス出ない。
・袋などにした場合、端から裂けやすく開封しやすい(場合によっては弱点にもなるが・・)

セロハンの弱点
・吸水すると軟化してフニャフニャになる
・乾燥しすぎると脆く、破れやすい。
・熱で反る。

※弱点対策品として「防湿セロハン」があるが、これは普通のセロハンの表面にポリ塩化ビニリデンを塗布したもので、こうなると純植物性ではなくなる。

このように、セロハンは、適正に管理された木材供給源からなら持続的に得られる原料で作られるモノであり、その他の地球にやさしい長所も活かし、弱点を考慮しながら再び採用すべきものだろう。

◎「カポック」は”エコ重視時代”に再注目で登場?!
観葉植物として普及しているカポックですが、日本にはいつ頃から存在しているのだろうか?
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私がカポックという植物を知ったのは1960年代前期(昭和30年代後半)に、「カポック・コーン」採用のスピーカーといううたい文句でフォスター電機(株)(当時のブランド名は「FOSTER」、現在は「FOSTEX」※)から「FE-201」などの品番の商品の広告が電気雑誌に頻繁に掲載されていたからで、ただし当時はカポックがどういう姿をしているかなど知らなかった。

コーン部(振動板)にカポック採用のFOSTER FE-201 20センチ口径ダブルコーン フルレンジスピーカー
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話は少しそれるが、フォスター電機という会社は技術力が優れ、ソニー、ヤマハ、ゼンハイザーなど多数の大メーカーのスピーカーを製造している(いわゆるOEM)し、全世界の自動車の車載スピーカーの10パーセントは同社製。それゆえに早くからスピーカーのコーンの材料の研究開発にも取り組んだのでカポックも60年近く前には採用していたわけで、現在は例のケナフも当然のように使用しているのだそうだ。

ところで、以前に紹介したイタリアのソナス・ファーベル社の製造するスピーカーのコーンの一部には”ケナフが使われている”と紹介しましたが、同時にカポックも使われているとのこと。
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さて、カポックのいかなる部分を使っているのか・・それは大木になってできる”長さ20センチくらいの紡錘形の実の中の種のまわりに綿のように着く繊維”。・・ということは、木を伐採せずに実だけを使うのでサステナブル・・というところが素晴らしい!
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最近、カポックを積極的に活用する会社が注目されている。それが「KAPOK JAPAN(株)」(社長:深井喜翔)。
同社の活動趣旨は・・「生産者、消費者、地球環境、全てに無理のない形を模索しながらサステナブルで機能的な素材を世界中に届ける」 (上の3枚のカポック写真は同社公式サイトから引用)
https://kapok-japan.com/

従来、カポックの繊維は短くて衣料用の糸に向いていなかった弱点を、旭化成との共同開発で解決して、シートやコートの製造をしていて、順次商品陣容を増やす計画。

◎復活して欲しいモノ(1)経木(きょうぎ)
経木とは木材を薄く削った板で、元は経典を写すのに高価な紙の代わりに使われたのでこの名が付いた。厚みは1ミリ~0.05ミリくらいで、厚いものは駅弁などの折箱などに使われ、薄いものは昔は食料品店などで品物を包んで客に渡されたりした。材質は杉、檜、赤松などが使われた。

経木(一例:赤松材15×51センチ 100枚3618円)(ヤフーショッピングサイトより引用)
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厚手の経木使用の”わっぱ”(128×50ミリ 10個1990円税別)(モノタロウサイトより引用)
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経木が食品に使われたのには訳があり、殺菌力、抗菌性、吸水性、保湿性があるから。そして廃棄しても土に戻ったり、バイオマスにも使える。もちろん石油由来でもない・・ということで近年再登場の動きあり。

私が個人的に切望するのは、”経木に包んだ納豆”であり、理由は”納豆と経木の香りが絶妙に合うから”で、現在のような無臭の発泡スチロール容器に入ったものはもちろん、昔のように”わらずと”に包まれて”わら”の匂いが勝ってしまっているのもダメ。発酵食品の権威である小泉武夫氏も”経木に包んだ納豆は味がワンランクアップする”と言われている。

私が子供の頃は、毎朝に納豆売りの少年が「ナアットナットーナットー」という発声で路地をまわっていた。
その納豆は一辺が10センチくらいの正三角形になるように折りたたんだ経木の中にくるまれていた。量としては100グラムぐらい? いや当時はまだ尺貫法時代だから30匁(112.5グラム)だったかも知れない。

その香りからすると経木は杉ではなかったが、檜なのか赤松だったのかわからない。しかし納豆には赤松材が最適らしいが、赤松は松茸のモトだから悩ましいものと思ったら、計画伐採によって赤松の経木はけっこう多く使われているようだ。

小泉氏自作の経木三角折り納豆を開いた様子
  (「丸ごと小泉武夫マガジン」より引用)
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余談だが、今の納豆はおいしいものが少ない。それは原料の大豆をなぜか小粒にしてしまっていることが大きな原因で、納豆は大粒のほうが旨い。ということを周囲に広言していたら、いました同意の人が・・俳優の中尾彬が「納豆は大粒に限る!」と、食通の氏が言うから心強い。

◎復活して欲しいモノ(2)竹の皮
以前のブログでも言及しましたが、竹林保全とエコ的有効利用のためにも竹の皮は大いに使うべき。その竹の皮の特長は防腐性、抗菌性、通気性あることなど。これも前出の経木と同様に昔は食品関連に多用されていたものの現在はプラスチック類に代替されてしまっているが、非石油由来素材としても再登場必要。
竹の皮:長さ47~50センチ、巾12~14センチ(Amazonサイトより)
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しかし、昔から変わらずに竹皮を使っている例がある。それは「のし梅」と称する和菓子。これは半透明の琥珀色した厚さ3ミリほどの羊羹のような食感の梅の香りする甘酸っぱい味の菓子で、これを2枚の竹皮で挟む格好となっている。私の知る限りでは茨城県と山形県で作られているようだ。実はこの和菓子、私の大好物。
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竹皮寸法は長さ15センチ、巾4.5センチ
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この半なまのような菓子は、防腐性や抗菌性をもつ竹皮が必須だったのでプラスチック素材は不採用になったと考えられる。ちなみにカマボコのかまぼこ板の役目の一つは、製造直後の余分な水分吸収(その結果、カビや細菌の繁殖抑止)と、その後のカマボコ本体の乾燥防止のために逆に水分補給するという水分調整なのでプラスチックは使えないという点では”のし梅”の竹皮採用のケースと似ている。
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※「フォスター電機」の前称は・・「信濃音響」・・ついでに電気・電機各社の前称は・・
 「パイオニア」←「福音電機」・・創業者:松本望の父が有力なキリスト教宣教師
 「ソニー」←「東京通信工業」
 「シャープ」←「早川電機」・・創業者:早川徳次がシャープペンシルの発明者
 「富士通ゼネラル」の「ゼネラル」
「八欧電機」
 「アイワ」(現在は十和田オーディオの子会社)←「愛興電機」
 「パナソニック」←「松下電器産業」
 「オムロン」←「立石電機」
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