この文章作成中に、自民党の甘利幹事長が衆院選の小選挙区で落選、比例で復活となったものの、役職辞任したニュースが出てしまいました。これには以前からくすぶっている問題に加えて、以下の内容もちょっとだけ影響しているかも知れません。

◎「セコ」なのか「エコ」なのか?
先日、情報誌「フライデー」(2021.11.5号)の発刊広告見出しの中に次のような一文があった。

『就任祝いに贈られた花を別の大臣や政務官へ・・ 甘利明幹事長「祝いの胡蝶蘭」使い回し疑惑』

胡蝶蘭(生産者ネット直販「ふじみのラン園」のHPより)

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私はそのフライデー誌の記事を読んでいないので詳細な内容、事の真偽はわかりませんが、事実だったとしても、使い回し品を受けた方には実害はないでしょう。

しかも、(甘利氏側が)戴いた胡蝶蘭(例外なく鉢植え?)への水やりなど手入れが十分にできないですぐに枯らしてしまうくらいなら、他の人、事務所など生かしてくれそうなところへ送る(贈る)ほうが良いし、そうすることで一種のエコとなるとも言えるので・・「これはセコなのかエコなのか?」などという文言もネット上に飛び出した。

・・ということでこの話、 “あまり(甘利)酷い話”とまでは言えないのでしょう。

しかし今回のフライデー情報に関連して思い出すのは・・昔、私が聞いてその酷さに驚いた実話ともう一つの同様な事件であり、これらは実害が出た可能性があるもので、まず・・

◎大企業の副社長宅での”飲み物使い回し行為”
今から約60年前、私の友人のお姉さんが、東京でも”お嬢様学校”と言われる「跡見学園」の高等学校(私の記憶があいまいで中学校だったかも)の生徒だった時の話。

当時の学校の教育カリキュラムの一つとしての”家事見習い実習”があったようで、彼女が送り込まれたのは”重電も家電も製造する(誰もが知る)大企業の副社長宅”だった。

そこで家事の手伝いをする中で驚いたのは・・頻繁に来訪してくるお客さんに対して出す飲み物が、夏には「カルピス」が多かったのだが、そこで彼女が指示されたのは・・

「お客さんが飲み残したカルピスは、次のお客さん用にそのまま少し注ぎ足して出すように」・・という信じがたいものだったそうです。

左は昭和30年頃のカルピス

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そして・・
◎「船場吉兆・料理使い回し事件」
2007年、大阪市中央区北久宝寺町に在った料亭「船場吉兆」で、まず”賞味期限切れ食材の販売” “食材の産地偽装”が発覚して、客足が遠のいて営業不振の結果、2008年1月に民事再生法適用によって再出発していたところ、5月に”客の食べ残し料理の使い回し”も発覚して同月末、遂に廃業に追い込まれた。この店は有名な高級料亭「吉兆」から”のれん分け”された存在だったため、特に注目されたものだった。

◎「見ぬこと清し」では済まされない!
昔から「見ぬこと清し」(または「見ぬもの清し」)という言葉があり、その意味は・・

“料理やお菓子などは、そのもとの材料が”見にくい(醜い)"ものだったり、調理場・製造現場が汚かったりした場合、それを実際に見てしまうと気になって食欲が無くなるものだが、それを見ることがなかったら、出されたものを何の疑いもなく清く美しくおいしい食べ物として口にしてしまうものである。”というもので、

この言葉が存在するということは、これに当てはまるケースが世の中にいかに多いかを表すものでしょう。

「胡蝶蘭の使い回し」と違って「大企業副社長宅」と「船場吉兆」双方とも、食べ物・飲み物の使い回しであり、その行為による飲食物には、”先客の会話中に飛んだつば”や目に見えぬほどの埃が入り、その上に材料の酸化・乾燥も進んでいるなどの可能性が十分にあり、万が一、先客が持っていたかも知れない何らかの病原菌が入ったりすることもあり得る。ゆえに摂食者が体調不良や何らかの病気を発症するなどの実害が発生する恐れも無いとは言えず、

この”飲食物使い回し行為”は絶対に許されるものではないことは言うまでもない。
 
しかも、このお宅・この店を訪れたお客さんは"普通よりは上質の飲食物が出てくるもの”という認識をもっているものなのに、それを裏切る酷さで、二重の罪をおかしている。

ここでとり上げた二件の罪ある行為は、まさにこの「見ぬこと清し」を意識して実行したことになる。

ところで・・
◎なぜ副社長宅でカルピスなのか?
カルピスは1919=大正8年、日本最初の乳酸飲料として、三島海雲(1878=明治11年~1974=昭和49年)氏が製造・販売開始。
三島海雲(Wikipediaより)
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カルピス開発の元となったのはモンゴルの"酸乳"という飲み物であり、これが三島氏の体調回復に効果があった実体験から、これを研究改良して完成したもので、健康のために安心して飲める飲料とうたって大ヒットしたので「国民的飲料」とまで言われるようになった。

三島氏は大阪のあるお寺の住職のもとに生まれ、13才で得度し、仏教系学校(後の龍谷大学)に学んだことによる仏教哲学が根底にあるから、私利私欲を求めず、言行は”国のため、民のため”に向けられ、例えば、関東大震災被災で飲み水が得られない地域民には、カルピス希釈液を無料で供給した。その際にはカルピスに加え入れるための氷も買い集め、動いてくれるトラック数台をやっとの思いで手配するなどもあって多額の費用がかかって工場の金庫の中のお金すべてを使ってしまっていた。

しかも三島氏は何事にも正直であったので、自然に一流の政財界人、文化人と交流があり、またそれらの人からの支持も得られた。その表れの一つとして・・与謝野晶子は「カルピス」という商品名を読み込んだ歌を数首詠んでいる。

三島氏はカルピスを一流の飲料にするために、何事も日本一を目指して斬新で積極的なマーケティングを行った。

先ずカルピスという商品名決定に際しては、三つのネーミング案の中から語感の最も良いものを、当時、日本の音楽界の重鎮である山田耕筰氏に選んでもらった。 (2020年のNHKの連続テレビ小説「エール」の中で故志村けんが山田氏を演じていた)

宣伝ポスターは洋画家の東郷青児、漫画家の岡本一平(岡本太郎の父)ら一流人に依頼。

第一次大戦後の特にドイツを中心とした欧州の芸術家たちの経済的救済目的で、ポスター図案を懸賞金付きで国際公募した。その時の第3位を獲得したのがオットー・デュンケルス・ビューラー作の”カルピスを飲む黒人”の図案であり、これがマークとして以後70年近く使われた。※
そして日本最初のアンテナショップの性格をもった喫茶店「カピー」を1933(昭和8)年に新宿、翌年に井の頭公園内に開店して、新規開発した飲料をここでテスト販売もして民の趣向も探っていた。

このようにカルピスは国民的人気の飲料でありながら、一流感も伴うという性格をもっていたことに加えて、常温でも保存がきくという利点もあったために贈答用に多く使われた。・・そこで前出の大企業の副社長宅には大量の贈答品のカルピスもあったであろうことは想像に難くない。

※”カルピスを飲む黒人(黒い人物)”マークは黒人差別を表すものか?
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長年親しまれてきた”帽子をかぶった黒人がカルピスを飲んでいるマーク”は、日本の某団体が「黒人差別」の図柄であると主張したので、1990(平成2)年1月をもって使用が中止されてしまった。
しかし、このマークの図は”差別を表しているとは言えない”であろう。
むしろ”楽しそうに、おいしそうにカルピスを飲んでいるなら、それは誰が飲んでもよいものであり、それを黒人はダメと言うなら、それこそ差別である”・・この図案の原作者は差別意識など無く、単に白いカルピスを際立たせるため、および画面上での白黒の強弱のバランスをとるために単に黒色を人物と服に配色したにすぎないものと考えられる。(実際に使用のマークは濃紺色が多かった)

◎カルピスの姉妹品「567」(ゴロナ)
「567」(ゴロナ)と称する飲み物の主原料ガラナは”つる性“植物で褐色の実は直径1センチほどの球状であり、その種を利用する。これはアマゾン川の一部の流域にだけで採取される貴重なもの。
この種には”人間の体と健康のためになる効能としては挙げればきりがないほど※”多様な成分が大量に含まれるので、むしろ多量に摂取すると副作用を起こすほどで、例えばカフェインはコーヒーの数倍含有。
そこで、三島氏がその効用に着目して、ガラナエキスに柑橘果汁を加えた日本初のガラナ飲料を1932(昭和7)年に開発して、翌年から前述の新宿と井の頭公園内のアンテナショップで”滋養強壮”の効能をうたって、品名を「567」(ゴロナ)として供した。このネーミング「ガラナ」と語呂合わせしたことは勿論、56(語呂)あわせともなっている!

ところが(ガラナ入りの飲み物を飲まれた経験がある方はご理解できると思いますが、ちょっとクセがあるので)人気が出なかったからであろう、本格的製造販売はされなかった。

しかし1962(昭和37)年に復活させて再販売。その背景として、この頃にはコーラが普及していたので、たぶん、似たような風味のガラナも支持されるのではないかという読みがあったのではないだろうか?

「567」(ヤフオクのtynnJ551さんの出品写真から引用)
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私は丁度この頃に、実家がお中元で戴いたカルピスとオレンジカルピスなど詰め合わせセットの中に「567」が1本入っていたので、「何、コレ?」と思いながらそれを飲んでみて、奇妙な味ながら嫌いではないなと感じた経験がありますが、それはこの一回きりでした。それもその筈で、やはり「567」は充分な支持を得られなかったのでしょう。すぐに市場から消えてしまいました。

しかし、ガラナ自体は効能の優秀さで需要は廃れることは無く、現在は各種エナジードリンクなどに多用されている。

※ガラナの効能に興味ある方は→https://alloeh.jp/articles/459 

◎”飛話”:「船場吉兆」釈明会見にちなみ、話は飛んで・・
「船場吉兆」の不祥事が最初に発覚した2か月も後になってやっと、女将とその長男が出席して釈明会見が行われたが、その際に”言葉がつまってばかりいる長男”に対して女将が横から”言葉の指示”を小声で出していたのだが、それをすっかりマイクが拾っていたから大変 !これがテレビで全国に流れてしまった。

それ以後、この女将は「ささやき女将」と呼ばれるようになった。会見後に息子は女将に向かって「あんなこと(横から)言わんでもよかったのに」・・と言ったそうで・・

それはまさに「ささやかないで」・・「Whisper not」(ウィスパーノット)であり、これから連想されるのはモダンジャズの名曲「Whisper Not」(ベニー・ゴルソン作曲、後に別人が歌詞を加えた)
https://www.youtube.com/watch?v=fEG09imI4-I
  (作曲者本人のサックス他ミルト・ジャクソン、アート・ファーマーらとの共演版)
そのヴォーカル版をエラ・フィッツジェラルドが歌うと・・
https://www.youtube.com/watch?v=Mn2QWcP1pWU

ついでに同様な”~not”のカタチの「forget me not」(フォゲットミーノット=忘れな草)も忘れられない? !
日本の歌にも「勿忘草(わすれなぐさ)」や「忘れな草をあなたに」などがありますが・・
ドイツ、イタリア、スイスが共同で1959年に製作の映画「忘れな草」の主題歌「Non Ti Scorder Di Me」名曲 !
https://www.youtube.com/watch?v=-lJ0oG03eOQ  (パヴァロッティ版)
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